健康への効果が話題になっている「ブラッククミンシード」
「死以外のすべてを治癒できる」とまで言われているブラッククミンシードの効能は、美容や健康への意識が高い方は聞いたことがあるでしょうか。
健康増進効果に関する研究論文も多いので、注目の食材であることは間違いありません。
ただ、スパイス使い&元看護師として「健康効果をうたう食材は、多くの方が副作用を考えず盲目的に摂取しやすい」という事が心配になります。
「薬も摂取しすぎれば毒になる」という事は言われなくても分かると思いますが、多くのサイトがブラッククミンシードの良い面ばかりをまとめているので、注意喚起の意味も含めて本記事では効能に合わせて副作用・毒性についてもお話したいと思います。
Contents
ブラッククミンシードとはどんなスパイス?
ブラッククミンシードは、和名を「ニオイクロタネソウ」と言い、英名が「Black Cumin」、学名は「Nigella sativa」と言います。
インドでは「カロンジ」という名前でスパイス料理に使われていますが、私がインドに滞在していた時は聞いたことがありませんでした。
名前に「クミン」とありますがブラッククミンシードはキンポウゲ科の一年草、通常のクミンはセリ科の植物なので全く違う別の植物です。
ブラッククミンシードの効能
- 鎮痛作用
- 抗菌・抗炎症作用
- 抗カビ・抗ウイルス作用
- 抗酸化作用
- 降圧作用
- 気管支拡張作用
- インスリン感作
- 肝臓保護作用 など
上記はブラッククミンシードの効能として挙げられる作用のごく一部で、論文を閲覧できるサイト「PubMed」をみると1200件以上の論文がヒットします。
いわゆる「スーパーフード」と呼ばれるものの1つで、死以外を治癒することができるというのはあながち大げさじゃなさそうだと感じるくらい、様々な効能があるのは研究論文の数からもわかります。
上記の効能から「2型糖尿病」「高血圧」「抗てんかん」「喘息」などへの効果が期待されています。
全ての論文に目を通したわけではないので何とも言えませんが、これらの病気に悩む人にとっては夢のような食材であることは理解できますね。
ブラッククミンシードの注意すべき副作用と毒性
園芸品種「ニゲラ・ダマスケナ(Nigella damascena)」との違い
スパイスとして食用になるブラッククミンシード(Nigella sativa/ニゲラ・サティバ)を含むニゲラは約16種類あるとされ、そのほとんどが園芸品種で食用に適しません。
ブラックシードやブラッククミンとされるものの中には、ニゲラ・サティバの近縁種である園芸品種が含まれていることがあり、特に日本で一番見かけるのが「ニゲラ・ダマスケナ/Nigella damascena」という品種です。
※家のそばに植えてある園芸品種のニゲラ・ダマスケナ
園芸品種としておなじみのニゲラ・ダマスケナの和名は「黒種草/クロタネソウ」で、ニゲラ・サティバの和名は「匂い黒種草/ニオイクロタネソウ」です。
ニゲラ・ダマスケナの和名には「匂い」がついていないから種子の芳香が無いと思われるかもしれませんが、どちらかというとニゲラ・ダマスケナの種子の方が強い芳香があるので種子を食べ比べてみれば味の違いが分かると思います。
ただし、口に入れる前に注意点をお伝えすると、、
ニゲラ・ダマスケナの種子には植物アルカロイドという毒性のある成分(※植物アルカロイドは使い方によっては薬にもなる)が含まれているので、大量に摂取すると「瞳孔散大」「腹痛」「嘔吐」「痙攣」などを引き起こす危険性があります。
食用になるニゲラ・サティバは日本ではほとんど栽培されていないので、路肩に生えているニゲラを同じブラッククミンシードだと勘違いして摂取してしまうと大変なことになります。
数粒程度を摂取したのであればそこまで大きな問題になるものでもありませんが、大量に摂取するといけないので、サティバなのかダマスケナなのかをしっかり確認するようにしましょう。
スパイスとして食用に使われるのは「ニゲラ・サティバ(Nigella sativa)/ニオイクロタネソウ」で、園芸品種の「ニゲラ・ダマスケナ(Nigella damascena)/クロタネソウ」は毒性のあるアルカロイドを含むので食用に適さない。
そもそも日本でニゲラ・サティバが栽培されていたり自生していることは少なく、見かけるニゲラは大体園芸品種のダマスケナであることが多い。
ニゲラ・ダマスケナとニゲラ・サティバの見た目の違い
我が家で収穫した「ニゲラ・サティバ」と園芸品種の「ニゲラ・ダマスケナ」の見た目を比較してみます。
育てた環境とかにもよると思うので一概には言えないかもしれませんが、ニゲラ・ダマスケナの方が若干大きく、表面にザラザラとした凹凸があります。
左がダマスケナ、右がサティバなのですが、比較すれば違いが分かるような気もしますが、どちらか一方だけをみせられてもわかりませんよね。
ニゲラ・ダマスケナとニゲラ・サティバの味の違い
植物アルカロイドが含まれているという事はわかっていますが、微量なら問題ないであろうと両方を一粒ずつ食べ比べてみました。(※私個人の感想にならないように、夫にも食べ比べをお願いしました)
- 香りはあまり強くない
- 香りよりもやや辛み&苦みのある味がする
- 食感は黒ゴマ
- 香りが強く、ローズティーのようなバラの紅茶の香り
- 味はあまりしない、香りの印象が強い
- 痺れなどは無いが、食べたあと舌が少しスース―する
香りが強くバラのような芳香がするのが園芸品種のニゲラ・ダマスケナの方。
ダマセニンというアルカロイドやニゲルエールという揮発油の香りが、このバラのような芳香の原因だそうで、香料としても使われています。
一方で、ニオイクロタネソウという和名を持つニゲラ・サティバの方は、バラのような芳香は無く、味は辛み・苦み・雑味があってエグ味のある黒ゴマと言った所でしょうか。
スパイスは基本的には生では食さないので、このニゲラ・サティバをフライパンなどで炒ってみるともう少し食べやすくなるだろうなと感じました。
両者の味はかなり違うので、口に入れて食べ比べてみれば味で見分けることは出来そうです。
ブラッククミンシード(Nigella sativa)自体の毒性と副作用
ニゲラ・ダマスケナの種子にはアルカロイドという毒性が含まれていると書きましたが、実はニゲラ・サティバにもアルカロイドは含まれていることが分かっています。
ただ、ニゲラ・サティバのアルカロイドの毒性は非常に低いことから食用にできているようで、過剰に摂取することはやはりやめた方がいいように思います。
文献によると、ニゲラ・サティバの精油を皮膚に(局所的に)塗布した2名の被験者が接触性皮膚炎になったという報告があるので、アレルギーなど元々の体質だったり、体調不良などのコンディションによっては副作用が強く出てしまう事も考えられます。
The seeds are characterized by a very low degree of toxicity. Two cases of contact dermatitis in two individuals have been reported following topical use. ※参考:Pharmacological and toxicological properties of Nigella sativa、B. H. Ali、Gerald Blunden
情報やデータが少なく、許容摂取量などはわからなかったのですが、普段の食事で使う分には問題はないと思いますが、健康増進を目的に定期的に過剰摂取した場合や、皮膚への使用などで体調に異変をきたすかもしれません。
- 腹痛
- 嘔吐
- アレルギー性皮膚炎
ブラッククミンシードを安全に摂取するためのポイント
- 園芸品種「ニゲラ・ダマスケナ」は食用ではないことを知る
- ニゲラ・サティバでも過剰摂取は副作用の危険性があることを念頭に置き、体調に異変があればすぐに医療機関を受診する
一番心配なのは「健康にいい」という情報から、過剰摂取する人が増えてしまう事です。
ブラッククミンシード(ニゲラ・サティバ)自体は、インドでは普通にスパイスとして摂取されていて、通常の摂取量であれば問題はありませんが、シナモンやナツメグと同様に過剰摂取によって体調を崩すことがあることも知っておきましょう。
おすすめのブラッククミンシード&ブラッククミンシードオイル
ブラッククミンシードをそのまま種の状態で販売しているものはあまり多くありません。
多くがブラッククミンシードオイルの形かカプセルなどのサプリメントの形で販売しているものに分けられますが、自分で摂取量を加減しやすいオイルかシードの商品をおすすめします。
まとめ
健康増進効果が話題のブラッククミンシードですが、園芸品種との違いを知ることと過剰摂取や体質によって副作用が出る可能性があることを知っていないと逆効果になります。
まずは自分の体質に合うかどうかをしっかりと見極めて、体調に異変が出た場合はすぐに医療機関を受診するようにしましょう。
ニゲラ・サティバの栽培記録はこちら↓
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