独特な甘い香りのあるシナモンはデザートと相性が良く、シナモンパウダーがあればシナモントーストやシナモンコーヒーなどが簡単に作れるので常備しているご家庭も多いはず。
近年では、シナモンにダイエット効果や毛細血管の強化作用があるという話がテレビで放映され、香辛料としての使用範囲を超えてサプリメントとして摂取する人も増えてきました。
シナモンの健康効果は注目すべきところですが、元看護師である私としては気がかりなのが「過剰摂取による副作用」です。
薬はもちろん、水だって過剰に摂取すれば水中毒になるくらいなので、当然シナモンも取りすぎは良くないということは予想がつくと思います。
「ダイエット効果がある」と聞くと、女性がつい沢山食べてしまいたくなる気持ちもわかりますが、まずはその前に「どの程度までなら体に害がなく取り入れることができるのか」を知っておきましょう。
本記事では、平成19年度に行われた東京都健康安全研究センターによる「シナモン含有食品中のクマリンの実態調査」を元に、シナモンの1日の摂取量と過剰摂取した場合の健康被害について解説いたします。
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Contents
シナモンによる健康被害が懸念されて調査がスタート
そもそもシナモンによる健康被害が懸念され始めたのは、シナモンが糖尿病などの血糖値を下げるなどとしてシナモンカプセルがダイエット効果のあるサプリメントとして販売されたことがきっかけです。
当時は、シナモンの効果にばかりが注目されて、シナモンの大量摂取による安全性のデータが不十分だったことからドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)が消費者保護の観点からリスク評価を依頼されました。
また日本では、東京都が平成18年度の東京都食品安全評価委員会で、経時的にシナモン中のクマリンについての調査をして都民に情報を提供していくという発表をしています。
これまでは一つの香辛料として過剰摂取の不安がさほどなかったのに、健康食品として注目されたことで大量にかつ継続的に摂取する人が増えたために調査がスタートしたんですね。
シナモンに含まれる「クマリン」という成分が問題
昔からシナモンに含まれるシンナムアルデヒドという香気成分が胎児へ悪影響を及ぼすことは良く知られていて、妊娠中には摂取しない方がいいスパイスと言われていましたので、私も妊娠中にはシナモンの摂取は極力控えるようにしていました。
しかしそれ以外にも、シナモンに含まれる「クマリン」という成分が肝障害を引き起こす可能性があることが分かってきました。
クマリンは「感受性の高い人では比較的少量でも治癒可能な肝臓障害を引き起こす場合がある」とドイツのBfRによる報告で述べられています。
シナモンの種類と産地でクマリンの含有量が違う!
まず「シナモン」と一括りにしてしまっていますが、実はシナモンの種類によってクマリンの含有量が大きく異なることを知っておく必要があります。
シナモンの種類別(セイロンシナモン・カシア)のクマリン含有量の比較
シナモンには大きく分けてセイロンシナモンとカシアの2種類があり、一般的にはどちらも「シナモン」として同列に扱われますが、専門家はこの二つを区別していることが多いです。
簡単にこの2つの違いをご説明します。
セイロンシナモン(Cinnamomum verum)
※画像:wikipedia
最大生産国は「スリランカ」で、インド、インドネシア、ブラジルでも生産されています。
セイロンシナモンのシナモンスティックは、幹の外側の良質な樹皮を丸めたもので、薄くて簡単に手で崩れるほど柔らかいです。
粉末もカシアに比べるときめ細かく色も薄いのが特徴で高級品です。
セイロンシナモンのクマリンの含有濃度は、カシアに比べるとかなり低いです。
クマリンの平均含有濃度 13.7ppm*¹
*¹:シナモン含有食品中のクマリンの実態調査内で行われた、食品中のクマリン含有量調査で、スーパー及びデパートで購入した「スパイス」5社15製品(セイロンシナモン7製品、カシア8製品)の平均
カシア(Cinnamomum cassia)
カシアは別名「チャイニーズシナモン」とも呼ばれていて、主な生産国は中国、ベトナム、インドネシア、中央アメリカ、ミャンマーなどです。
堅い樹皮が付いたまま丸められていることが多く、粉末の舌触りもセイロンシナモンとは大きく違い、粗く色も濃いです。
カシアのクマリン含有濃度は、セイロンシナモンに比べてはるかに高いです。
クマリンの平均含有濃度 3257.5ppm*¹
カシアの産地別のクマリン含有量の違い
セイロンシナモンに比べてカシアの方がクマリンの含有濃度がはるかに高いことが分かったわけですが、カシアは産地によってもクマリン濃度に大きく差があります。
上の表は東京都健康安全研究センターの調査内で使われたシナモン5社15製品のクマリン濃度の平均値です。
カシアを原材料としたスパイスは僅か8製品の中での比較なのですが、産地別のクマリンの濃度を見るとベトナム産のカシアが圧倒的に高いのが分かります。(※平均にするにしてはインドネシア産・マレーシア産は1製品のみしか見てないので、あくまでその商品のクマリン濃度と言う事になるので注意が必要です。(たまたまその製品のクマリン濃度が低かった可能性もある))
産地別のクマリン濃度を言いたい時には、本来はそれぞれの産地ごとに20商品ずつくらい集めないと具体的な事は言えず参考値程度にしかなりませんが、ベトナム産のカシアは4製品の平均が5425ppmとのことなので、いずれもとても濃度が高いのには間違いなさそうですね。
シナモンの過剰摂取が気になる場合は、クマリン濃度の低い「セイロンシナモン」が原材料であるかどうかを確認しよう!
カシアの中でも、特にベトナム産カシアはクマリン濃度が高いので注意しよう!
BfRの定めるクマリン耐容一日摂取量(TDI)
BfR(ドイツ連邦リスクアセスメント研究所)が設定したクマリンの耐容一日摂取量(TDI)は、0.1mg/kg/dayです。
つまり、体重が50㎏の人なら1日のクマリンの耐容摂取量は5.0㎎という事になります。
セイロンシナモンは普段使いの分量なら健康被害はまず起きない
先ほどご紹介したシナモンの種類&産地別のクマリン平均濃度を元に、BfRが出したTDI(クマリン耐容一日摂取量)から各シナモンの一日の許容量は下記の通りになるそうです。
シナモンの種類 1日許容量 セイロンシナモン 364.58g カシア 1.53g ベトナム産カシア 0.92g ※シナモン含有食品中のクマリンの実態調査 本文内の数値から作表
ご覧の通り、セイロンシナモンであれば1日の許容量が364グラム以上なので、普通に暮らしていればまず超えることの無い量ですね。
参考までに、普段使う事のある分量で換算すると下記の通りです。
・シナモンパウダー小さじ1 :1.8g
・スパイスの小瓶をひと振り :0.1g
東京都健康安全研究センターの調査内で使われたシナモンを含む市販のお菓子で1日の許容量を計算すると、
- シナモンクッキー :147枚
- シナモンビスケット:734枚
- 焼き八つ橋 :20枚
- 生八つ橋 :29枚
が許容量になるそうなので、焼き八つ橋を毎日大量にでも食べない限り問題ありません。
ただし、ご家庭でシナモンクッキーやシナモンロールなどを作る時に、ベトナム産のカシアをふんだんに使うと許容量を超える可能性もありますので注意しましょう。
市販のシナモンパウダー(S&B・GABAN)はセイロンシナモンかカシアか?
ご自宅で普段使いでスパイスを使われる方の多くが、「S&B」か「GABAN」をお使いなのではないかなと思いましたので、この2社に販売しているシナモンパウダーの原材料について問い合わせてみました。
S&Bのシナモンパウダーの種類
S&Bのシナモンパウダーに関しては、電話で問い合わせたところ「商品によってカシアを原材料にしているものとセイロンシナモンを原材料にしているものがある」とのことでした。
スーパーでよく見かけるこちらの蓋が丸いタイプの小瓶に入ったS&Bのシナモンパウダーは「カシア」です。
原材料はカシアですが、これ一つで12g入りなので2週間以上かけて使い切るくらいなら許容量を超えない計算になりますね。
一方で、上の2種類「有機シリーズ」と「FAUCHON」はいずれも「セイロンシナモン」だそうです。
GABANのシナモンパウダーの種類
GABANにも電話で問い合わせてみましたが、いずれの商品も原材料は「カシアとセイロンシナモンの混合」とのことでした。
配合比率は当然のことながら教えてもらうことは出来ず、カシアの原産地についてはその時の収穫状況によって変わるので正確な情報をお伝え出来ないとのことでした。
注意すべきはシナモンを含む健康食品やサプリメント
今回シナモンのクマリン含有量について調べていて特に気になったのが「シナモンを含む健康食品やサプリメント」です。
東京都健康安全研究センターの調査で取り上げた5社5製品のシナモンサプリメントを調べると、セイロンシナモンが原材料と書かれている商品とカシアを原材料としていると書かれている商品で「クマリン濃度に差がみられなかった」と報告されています。
これは「原材料はセイロンシナモンだよー」と表記しつつ、実はカシアだったという可能性が否定できません。
色やきめの細かさで判断できるシナモンパウダーに比べ、サプリメントだとごまかされると分からないのが注意点だと思います。
普段からシナモンを摂取しつつ、サプリメントでもカシアを継続的に摂取していると許容量を超える可能性がありますので気をつけましょう。
まとめ
長くなってしまったので、最後にもう一度ポイントだけまとめます。
・シナモンは「妊娠中」と「クマリンの過剰摂取」に注意
・シナモンには「セイロンシナモン」と「カシア」があり、カシアにクマリンが多い
・カシアの中でもベトナム産のカシアはクマリン濃度が高い
・セイロンシナモンは普段使いであればクマリン許容摂取量を超えることはまず無い
・S&Bは商品シリーズによってカシアとセイロンを使い分け、GABANは混合
・サプリメントは成分偽装されると分からないので注意
おおざっぱに言ってしまうと「今現在使っているシナモンはセイロンシナモンなのかカシアなのかを確認」をして、「カシアであれば1日は小さじ1/3程度(約0.6g)に留めておく」と安全にお使いいただけるのではないかなと思います。
シナモンが大好き過ぎて、普通に沢山食べたい場合はセイロンシナモンを使うようにしましょう。
最後に、私が大好きなのは「エヌ・ハーベスト」の有機シナモンパウダーです。
私がかつて働いていた東京のスパイス専門店の商品なので原材料や品質は保証できます。(小分け作業をすると、パウダーの細かいシナモンは空気中に舞って大変なのですが、エヌハーベストのシナモンはとてもいい香りなので、この香りに包まれながら小分け作業する時間はとても幸せな時間でした。)
価格もさほど高くないので、どのシナモンパウダーを買えばいいのか迷っている方は是非一度試して欲しいです。
私が良くスパイスを購入する筋野商店さんのシナモンパウダーも品質が良くてお勧めです。
こちらのお店はセイロンシナモンのパウダーとカシアのパウダーの二種類置いてあります。
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