ご家庭でペットを飼われている方は、犬や猫が誤食してしまうといけない食べ物が数多くあることをご存知だと思います。
中でも香辛料は刺激が強く、胃腸などの内臓障害がでてしまったり、特定の芳香成分の代謝ができず肝・腎毒性があることはよく知られています。
スパイスの中には調理に使うもの以外にも、エッセンシャルオイル(精油)としてアロマテラピーや防虫スプレーとして使われるものもあり、食材だけに注意していればいいというわけではありません。
本記事では、一般的にイヌやネコが誤食、もしくは過剰に摂取すると危険だと言われているスパイスをご紹介します。
※本記事では犬や猫にあげない方がいいスパイスとして紹介しますが、成分は精油(エッセンシャルオイル)のほうが強まるため、スパイスそのものはそこまで有毒性が強くなくても「有毒成分を含むかどうか」という点において選んでいます。
Contents
スパイスに多く含まれる犬猫毒性を持つ成分とは?
一般的に香辛料(スパイス)は刺激が強く、犬や猫に与えない方が良いとされているものが多いのですが、特に危険性が強まりやすい条件が下記の2つです。
1.香辛料を元に精油(エッセンシャルオイル)として生成されているもの
2.高濃度で長期的に利用している場合
香辛料は漢方として使われるものが多いように、薬と同じで薬効があれば副作用もあるので使用には注意が必要です。
例えば、クローブやシナモンに含まれる「オイゲノール」などのフェノール類は、抗菌作用や殺菌作用を持つ反面、肝毒性と皮膚刺激性を持つので、高濃度で長期的に使用しない方がよいとされています。
事実、後述する犬と猫に害をもたらしうる香辛料で挙げるスパイスの多くは、このフェノール類が含まれているものが多いのです。
昨今では、精油をアロマオイルとして犬に使うことがあるようで、インターネット上には様々な情報が溢れていますが、本記事ではそのスパイスの精油成分に含まれる物質が「高濃度で長期的に摂取された場合」を想定して「害があるかどうか」を判断しています。
物質自体は薬にも毒にもなるので、その存在自体が悪いのではなく、使用方法や量を間違えると危ないよ!という視点で見ていただければと思います。
猫に対する精油成分の有毒性について
私は元看護師ではありますが、ペットのアロマテラピーに関しては全く関知していません。
しかし、近年の研究では猫の肝臓内の代謝機能的に精油成分を分解することが難しい動物であることが明らかになっているようです。
以下、2017年の薬学雑誌掲載の「非実験動物における化学物質代謝能の特徴と種差(水川ら)」という論文の引用です。
ネコでは UGT1A6 の偽遺伝子化による低いグルクロン酸抱合能が知られており,化学
物質に対する代謝能は他の陸棲哺乳類と比べ低いため,獣医療における医薬品投与の際は十分な注意が必要である.
ネコは UGT1A6 の偽遺伝子化によりフェノール化合物の代謝能が低いと予想されるため,他種とは異なる代謝パターンを示したものと推察される。
前述の通り、スパイスの芳香成分として「フェノール類」や「フェノールエーテル類」を含むものが数多くあるので、特に猫がいる環境での使用には注意した方が良いでしょう。
LD50値とは?
本記事では、イヌやネコに対する毒性の基準としてLD50値というものが出てきます。
LD50値とは、Lethal Dose 50の略で半数致死量とも言います。その物質を動物に飲ませた場合に、50%の確率で死に至ると想定される量のことで体重1キログラムあたりの量として表されます。
犬や猫を飼っている家庭では注意が必要な香辛料
1.クローブ(丁子)
主成分である「オイゲノール」がフェノール類(肝毒性)で有毒。
「公益財団法人 日本中毒情報センター」の中毒情報によると、犬の場合、経口で体重1kgにつき0.5gの接種で、24時間以内に昏睡、死亡が起こりうる量となっています。
クローブ抽出物は、ドッグフード等に添加物として含まれていることがありますが、クローブホールやクローブ油を犬や猫に与えるのはやめた方が良いでしょう。
クローブそのものよりも、精油(クローブ油)やアロマテラピー用のエッセンシャルオイルとして販売されているものの方がオイゲノール含有率が高いのでより注意が必要です。
2.オレガノ
オレガノの主成分は「チモール」と「カルバクロール」ですが、いずれフェノール類であるため、オレガノ精油の長期にわたる使用は有毒になることがあります。
オレガノオイルは特に皮膚刺激性が強いので、高濃度の精油成分が皮膚に直接つかないように気を付けた方が良いでしょう。
3.アニス(スターアニス:八角)
アニス(西洋茴香:セイヨウウイキョウ)やスターアニス(大茴香:ダイウイキョウ)の主成分である「アネトール」はフェノールエーテル類で、フェノール類同様に長期使用、多量使用で肝毒性、皮膚刺激性があります。
アネトールの他にも、フェノール類である「カビコール」も含みます。
4.タイム
タイムにはフェノール類である「チモール」と「カルバクロール」を含みます。
タイムとひと口に言っても、様々な種類とケモタイプ(化学種)に分けられ、含有成分も薬効も大きな違いがあるので注意が必要です。
よく見かけるものにレッドタイム油とホワイトタイム油がありますが、ホワイトタイム油はレッドタイム油を精製したものを言い、一般的にタイム油と言えば「レッドタイム油」を指します。
タイム油の毒性については、下記のようなデータがありました。
LD50値 ー レッドタイムラットで4.7g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)刺激性・感作性 ー レッドタイムヒトにおいて8%濃度に稀釈して皮膚に塗布したケースで、いずれもこれらは生じなかった。しかし、実験動物の皮膚に未稀釈でこの精油を適用したところ、激烈な刺激性を示した。
5.シナモン
通常スパイスとして使われるシナモンの多くは「シナモンバーク(シナモンの樹皮)」を粉末にしたものか、そのままの形で乾燥させたシナモンスティックです。
シナモンバークの他に、シナモンカッシア、シナモンリーフがあり、それぞれ含有成分が違います。
シナモンリーフの場合は主成分がフェノール類の「オイゲノール」であるのに対し、シナモンスティックは芳香族アルデヒドの「シンナムアルデヒド」が主成分です。
つまり、シナモンリーフの場合はクローブ同様に肝毒性に注意が必要で、シナモンスティックのシンナムアルデヒドは皮膚刺激性がトップクラスに強いので、もしそれぞれの精油を使う場合は皮膚に付かないようにする必要があります。
また、シナモンの香り成分のひとつである「クマリン」という物質も、長期的に摂取すると肝毒性が強いことが報告されています。(※参考資料:東京都健康安全研究センター)
犬や猫のみならず、人が食べる場合でも過剰摂取による健康被害の懸念があるので注意しましょう。
6.ペパーミント
ペパーミントには「メントール」、「メントン」、「シネオール」が主成分として含まれています。
精油にする場合に刺激性を持つことが言われているのですが、ペパーミント自体は余程大量に摂取しない限りさほど健康被害につながることはないと思われます。
しかし、精油に限れば下記のような事例があるようですので注意しましょう。
イヌにおいて、ペパーミント油、スペアミント油を水によくまぜて(水には不溶性だが)4%(敏感な人間には0.1%)濃度くらいで与えたところ、胃壁を弛緩させる効果がみられ、回腸・大腸の緊張・収縮力が減退した。
7.ペッパー
ペッパー(胡椒)の有効成分は「ピぺリン」です。
ペッパーは胃腸への刺激が強いので、犬や猫が食べると内臓障害の原因になることがありますので食べさせない方が良いです。
一般的にイヌやネコに食べさせない方がいいものとして挙がる筆頭の香辛料ですね。
8.マスタード
マスタードに含まれる辛み成分「アリルイソチオシアネート」は、わさびや大根にも含まれていますが、大量に摂取すると胃腸障害を引き起こすことがあるとされています。
ペッパー同様に刺激物ですので大量に摂取することは好ましくありませんが、ラットに対するアリルイソチオシアネートの経口でのLD50値は339mg/kgとさほど多くないので、誤って食べてしまった程度でしたらさほど問題はないでしょう。
9.オールスパイス
オールスパイスの主成分はフェノール類の「オイゲノール」「イソオイゲノール」「カビコール」です。
クローブやシナモン同様にイヌやネコに与えない方が良い香辛料の筆頭です。
まとめ
本記事でご紹介したスパイスは、イヌやネコにとっては有害になりうる物質を含んでいたり、刺激が強すぎるということでご紹介しました。
しかし今回ご紹介したもの以外にもイヌやネコにとっては日常的に摂取するのが好ましくないスパイスもありますので、一例として認識していただければと思います。
また、精油にすることでより成分が強まることから、本記事でも精油について触れましたが、ペットに対するアロマテラピーの有効性や有害性について私の意見を述べているわけではございません。
塩も多量に摂取すれば毒になるように、何事にも適量があります。
今回ご紹介したスパイスに関しても、多量に接種すれば中毒症状を引き起こしうる食材という視点でご認識いただければと思います。
私のインスタグラムではブログで過去にご紹介したスパイスを使った異国料理のレシピや、おすすめのスパイスの使い方や使用上の注意点などについてご紹介しています。
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